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答え合わせのしかた | 熊野塾

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塾長のブログ「答え合わせのしかた」

2017年10月25日 ブログ

数学の解説ってたいがい「〇〇をxとおくと…」とか「下の図のように点Aと点Bを結ぶと…」という感じではじまりますよね。たいがいの人はこの最初の1行目で立ち止まったりしません。「だってそうしろって言ってるんやから、そうなんやろ?」と言いたくなるかもしれませんが、実はこの1行目が一番重要と言っても過言ではありません。

なぜ〇〇をxと置くのか、”下の図”とやらがどこからやってくるのかが本当に分かっていないと、次の問題を解こうとしても第一手目からつまづくことになります。「解説を見たら分かるけど、自分で解けって言われたらできない」というタイプの方は、解説の1行目を自力で書けるか?なぜか説明できるか?という観点でよ~く考える習慣をつけると良いです。

私は学生時代、アルバイトで家庭教師をしていました。非常に優秀でほとんど教える必要がないくらいの子もいれば、私が家に着く前に脱走している子もいました。本当にいろんな子がいたわけですが、中でも特に印象に残っている子がいて、彼を仮にA君としましょう。

A君はいわゆる頭の切れる子でした。私立中の1年生だったのですが、小学生時代はおそらくあまり勉強せずにほぼ地頭だけで私立へ。ところが、さすがに私立のペースにはついていけず…というパターン。で、ある日そのA君に「素数は無限?有限?理由は?」と聞いてみたんです。

素数というのは、「1とその数自身以外に約数をもたない数」つまり(1×その数)以外のかけ算に分解できない数のことです。2、3、5、7、11、13…と不規則に出現します。「不規則」と書きましたが、今のところ規則性が見つかっていないだけで、もしかしたら規則があるのかもしれません。もしをそれを発見できたら100万ドルもらえます。興味ある人は「ミレニアム懸賞問題」「リーマン予想」でググってみてください。

で、そのA君の回答は「無限。だってもし有限だったら『最大の素数』というものがあるはずで、そんなものがあるならすでに習ってるはず。でも今までそんな数は習ってないから。」

思わず「その通り!」と言ってしまいました。数学的には丸はもらえないかもしれませんが、少なくとも「なんとなく無限!」とか「わからん!」とか、ある意味最悪な「知らん!」よりもはるかに良い。もちろん、A君もこれが模範解答であるなんて思ってはいないです。正解・不正解よりも試行錯誤することを楽しんでいるようでした。

これって数学が得意な人の共通点ですよね。「そんなん全然分からん~!」と言いつつ顔は笑っているという。苦手な人がみたら少し気持ち悪いかもしれませんが…。

ではどう考えたら良いのでしょう。A君の考えの「もし有限だったら」までは非常にいい線いってるんです。もっとも、この問題は中学生が最後まで答えを出すには少々難しいんですが、①この問題は有限か無限かの二択である②二択であるなら仮に有限が正解だとしたらどうなるはずなのか、どうなったらおかしいのか。反対に無限なら?と考え方のとっかかりは作れるはず。

最終的に、この問題の教訓として「選択問題の場合、順番にこれが答えなら?と仮定してみることが有効だ!」と実感できれば大収穫です。大事なのは「この問題を通して思考錯誤した結果、どんなことができるようになったのか?どんな教訓を得たのか?」であって、答えそのものではないということです。

数学において、こういった教訓はたくさんありますよね。例えば「極端な例を考えてみる」とか「一番単純な例を考えてみる」とか。これらを「ポイント!」とか言って教えることはできるのですが、残念ながら教えられただけでは「ふ~ん」で終わってしまいます。自分で考え、編み出すのが一番です。そのためには演習の「量より質」が必要です。ただやみくもに問題を解いて解説を読んで…を繰り返すのではなく、どうしたらこの解説が出てくるのか?を考えなければいけません。

ちなみに、素数の問題の証明の仕方はたくさんあります。中でもユークリッドの証明が有名なんですが、それが「仮に素数が有限だったとすると」というところからスタートしています。一応、この下に証明を書いておきます。

仮に素数が有限だったとする。この時、すべての素数の積を作ることができ、この数をPとする。すると「P+1」という数は「すべての素数の倍数+1」なので、すべての素数で割り切ることができない。つまり、「新たな素数である」か、「(最初に仮定した)すべての素数とは別の素数を約数に持つ」かのいずれかであり、どちらにしても最初の仮定と矛盾する。よって素数は無限である。

繰り返しになりますが、大事なのはこの証明自体ではなく、「どうしたらこの証明が出てくる?→この証明は答えを仮定するところからはじまっている→もともとが選択問題なので答えを仮定することが有効→特に二択やったら余裕やん!」と自分なりの教訓を編み出すことです。

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